有料老人ホームの利用料に係る法令等


法律

有料老人ホームは老人福祉法 に基づいて規制されており、利用料については次のような規制があります。 
 〇  権利金は禁止(第29条第6項 )
 〇  前払金を受け取る時は、厚生労働省令(注1)に基づいて書面で算定の基礎を示し、かつ厚生労働省令(注2)に基づいて保全措置を講じる(第29条第7項)
 〇  前払金を受け取る時は、厚生労働省令(注3)に基づいて、3ヶ月以内に退去した場合は一定の額を返還する(いわゆる90日ルール)契約をする (第29条第8項)
   (注1)老人福祉法施行規則第20条の九 
   (注2)同規則第20条の十(条文中の大臣が定める措置は厚生労働省告示第266号 2011年改正) 
   (注3)同規則21条

指針

厚生労働省は地方自治法に基づく技術的な助言として「有料老人ホームの設置運営標準指針」(厚生労働省老健局長 平成25年3月)を自治体に通知しています。このなかの9項目が利用料等に関するもので、「有料老人ホームは契約に基づき入居者の負担により賄われる」としたうえで、家賃相当額、介護費用、食費・管理費等について規定しています。概略は次にようになっています。
 1.家賃相当額
 有料老人ホームの整備に要した費用、修繕費、管理事務費、地代に相当する額等を基礎として合理的に算定したもの。近傍同種の住宅から算定される額を大幅に上回る者でないこと。
 月払い方式の場合で、敷金を受領する場合は6ヶ月分を超えないこと。退去時に居室の原状回復費用を除き全額返還すること。
 一時金方式の場合
 〇  権利金に該当しないことを契約書等に明記したうえで入居者に十分説明すること
 〇  一時金の算定根拠を書面で明示し、保全措置を講じること
 一時金の算定根拠は、想定居住期間を設定したうえで次式で算定すること
  【期間の定めがある契約の場合】
(1ヶ月分の家賃相当額)×(想定居住期間(月数))
【終身にわたる契約の場合】
(1ヶ月分の家賃相当額)×(想定居住期間(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)
 想定居住期間を超えて契約が継続される場合に備えて受領する額は具体的な根拠により算出すること
 〇  返還される額については契約書に明示したうえで十分に説明するとともに、返還は確実に行うこと
 90日ルールを事実上短縮しないこと
 着工時に相当数の入居者が見込まれない場合は、安定的な契約が見込まれるまでの間、一時金について銀行保証等を付すこと
 2.介護費用(介護保険対象外の費用)  
 ①  都度払い又は月払いの場合は、サービスの内容に応じて人件費、材料費等を勘案した適切な額
 ②  一時金方式の場合、想定居住期間、開設後の経過年数に応じた要介護発生率、介護必要期間、職員配置等を勘案した合理的な積算方法によること。ただし、介護保険料の利用者負担分として一時金を受け取ることは不適当
 ③  介護保険外に費用を受け取る場合は「特定施設入居者生活介護事業者が受領する介護保険の給付対象外の介護サービス費用について」(平成12年3月30日付老企第52号老人福祉局企画課長通知)によること
 3.食費、管理費等 
 ①  食費、管理費、その他の運営費等を基礎とする適切な額
 ②  食費、管理費等を含め終身保障契約は好ましくない

利用料の算定方法(管理者による試算例も示します)

厚生労働省は、利用料の算定方法の拠り所として、「有料老人ホームにおける家賃等の前払金の算定の基礎及び返還債務の金額の算定方法の明示について」 (厚生労働省老健局高齢者支援課 平成24年3月16日)を各自治体に示しています。前払金の算定の基礎の概要は次のようになっています。
 1. 想定居住期間(入居者の終身にわたる居住が平均的な余命等を勘案して想定される期間)
   簡易生命表等による平均的な余命等を勘案するなどして居住継続率が概ね50%となる期間を考慮して設定する。
 2. 想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する金額の算定の基本
   居住継続率が0になる年度における家賃等の前払金の残高が0となるように設定する。
 3.想定居住期間は、前払金の償却期間と同じ期間とする。 

この算定方法の詳細は「算定方法の明示」をご覧いただくとして、当ホームページ管理者が算定した結果を以下に示します。

【想定居住期間】
想定居住期間は下表に示すような計算結果であり、この期間は平均余命とほぼ一致しています。
入居時年齢(歳)   想定居住期間(年) 
 男性  女性
65 20 26
 70  16 21
75  12 16
 80     9  12
85   6   8

(参考)通常、有料老人ホームは想定居住期間ではなく「償却期間」という考え方をしています。有料老人ホームの類型、支払方法(一括払いや部分払い)、入居時の状態(自立や要介護)で異なります。たとえば介護付で一括払いの場合、償却期間は一般居室で平均10年、介護居室で平均5.3年となっています。
出典:平成24年度 制度改正後の有料老人ホームに関する実態調査及び契約等に関する調査研究報告書(全国有料老人ホーム協会 2013年3月)

【前払する家賃等が月額10万円の場合の想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する金額(期間超過分)】
入居時年齢(歳)    男性  女性
 前払総額 期間超過分   前払総額  期間超過分
 65  2,560万円  160万円 (6%)  3,037万円  37万円 (1%)
 75  1,668万円  228万円(14%)  2,100万円  180万円 (9%)
 85  912万円  192万円(21%)  1,179万円  219万円(19%)
期間超過分の欄のカッコ内の数値は、期間超過分を初期償却率と見なした場合の割合(期間超過分÷前払増額×100)。入居時年齢が高いほど初期償却相当割合が高いのは、高齢になるほど想定居住期間以降の居住期間が相対的に長いことと、前払金の運用期間が短いことによると思われる。

(参考)通常、有料老人ホームでは、期間超過分に相当するのが「初期償却率」です。おおよそ20%台半ばですが、各ホームによってばらつきがあります。




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