トイレ
トイレの動作はおおよそ次のような構成です。
①トイレへ(から)の移動 ⇄ ②扉の開閉 ⇄ ③トイレ内の移動 ⇄ ④脱(着)衣 ⇄
⑤便器での立ち座り ⇄ ⑥便器での姿勢保持(排せつ、清拭)
こうした動作がしやすくなるようにリフォームを検討しましょう。 また、どのような身体の状態を想定しておくかが大切です。
〇自立して用が足せる状態を想定するのか
〇介助が必要な状態を想定するのか
〇車いすを使うことまで想定しておくのか
によってリフォームの内容が異なります。また、トイレまでの距離、扉、トイレ内の動き、便器での立ち座り、便器での姿勢保持などを考えておきます。換気、暖房、照明なども大切です。ポータブルトイレを使うことを考える場合は汚物流しの検討も必要です。
動作①トイレへ(から)の移動 について
寝室からトイレまでの距離がだいたい4mを超えると高齢者には遠いという感じを与えます。できればトイレと寝室を隣り合わせにしたり、寝室から直接トイレに行けるような扉を付けるなどの間取りとするとよいでしょう。ただし、寝室に隣り合わせのトイレでは排水の音が大きくならないように消音型の便器を使うなどの工夫が必要です。
動作②扉の開閉 について
出入口の戸は引き戸とすると開閉動作が開き戸に比べて楽くです。開き戸にする場合は外開きが良いとされています。内開きだとトイレから出るとき戸を避けるため体をかわす必要があることと具合が悪くなって倒れた時外から救い出しにくいことなどが理由です。
戸の幅は普通60cm程度ですが80~85cmの戸もあり状況が許せば広くしたほうがよいでしょう。また、出入り口の段差は解消(5mm以下)するようにします。
動作③トイレ内の移動、④脱(着)衣、⑤便器での立ち座り、⑥便器での姿勢保持(排せつ、清拭) について
介助のためのスペース
介助が必要な場合、便器の横や前に50cm以上のスペースを確保することが望まれます。
(日本住宅性能表示基準 評価方法基準 108ページ(等級5)、110ページ(等級4))
自立して用が足せる場合は不必要にスペースを広げないほうがよい場合があるので、例えばトイレ内に洗面カウンターを設けておき、介助スペースが必要になったら取り外すという方法もあります。
(図の上にポインターを置いたり外したりしてください)
FJC公式テキストをもとに作成
壁や柱を取り外して介助スペースを確保する方法もありますが、補強が必要場合も多く、費用もかかりますので
事前の検討が欠かせません。また、同居家族が共用する場合には、音や臭いなどが問題となる場合もあり
家族間で事前に話し合うことが大切です。
(図の上にポインターを置いたり外したりしてください)
FJC公式テキストをもとに作成
手すりの取り付け
立ち座り時の姿勢が安定しない場合には、手すりが役に立ちます。立ち座り用の
縦手すり、座位保持用の
横手すり、これらを合わせた
L型手すりなどがあり、図に示す取り付け位置を参考に
使用者の状態に合わせて調整して取り付けます。
手すりは便器からの立ち上がりの際に、
麻痺していない方の手で縦手すりを握ることになります。
右手麻痺と左手麻痺では同一のトイレスペースであっても便器と手すりの配置は異なります(左右対称)ので設置の前には十分注意してください。
トイレの設備
便器
便器を選ぶときに注意する点は
座った時の姿勢が保てるかという点です。車いすの場合は便器へ移るときの動作を考える必要があります。足が曲げにくい場合は便器の下に台を作って便座を高くするか便座の高い便器を使うかなどを検討します。こうしたことは作業療法士などの専門家と相談することが不可欠です。
温水洗浄便座は清拭が楽になるので高齢者などには適していますが、下半身に麻痺がある場合は上手く当たらない場合があるので適切な位置を確認する必要があります。洗浄器のスイッチの位置なども使いやすいよう調整する必要があります。
便器の内側の色は便の色をチェックするために白い色がよいでしょう。
床
床の材質を選ぶ場合は次のようなことに注意しましょう。
①汚した時のことを考えて、拭き掃除がしやすいこと
②転倒予防のため滑りにくいこと
なお、便器前方の床面にはマットを敷かないほうがよいでしょう(マットの端につま先を引っかけて転倒したりマットごと滑る危険性があります)。
汚物流し
ポータブルトイレやベッドで使用する差し込み便器の排せつ物を捨てるための専用流しで、家庭用は壁掛け型(幅50cm、奥行き30cm、取り付け高さ目安65cm)です。オストメイトの方は事前に看護師やリハビリ関連職などに詳しく話を聞くことが欠かせません。
暖房
冬にはトイレの温度が相当低く、居間などとの温度差が10~20度もでき脳卒中や虚血性心疾患などの誘因になりかねません。パネルヒーターなどの輻射暖房器などを設置してトイレ全体を日頃から暖かくしておくとよいでしょう。
換気
トイレ排気口は臭気の発生源を考えて床面に近い壁面に設置するとよいでしょう。寝室と隣り合わせにトイレを造る場合は換気機能や消臭機能を付いた便器を用いるか、トイレに換気扇を設置する必要があります。
照明
トイレの照明が明るすぎると、夜間、高齢者には暗い寝室と比べてまぶしさを感じることがありますので注意しましょう。スイッチは明かり付きとするとよいでしょう。