住まいの問題点
日本の木造住宅は高齢者にとって幾つかの問題点があります。問題点として福祉住環境コーディネーター公式テキスト(2級)では次の6点を挙げています。
第1は、床面に段差ができやすい点です。段差は、玄関の敷居、玄関の上がり框(かまち)(框とは床などの端にわたす化粧横木のこと)、廊下と和室、洗面・脱衣室と浴室などにあります。段差は、つまづき転倒して骨折し、最悪の場合寝たきりの原因にもなります。(「リフォーム」>「段差」のページ参照)
第2は、尺貫法の3尺(910mm)を基準に住宅が造られてきた点です。現在でもこの基準が使われていることが多いようです。たとえば、廊下や階段の幅は、柱の中心と柱の中心との間が3尺となっています。この幅は、介助を必要とする高齢者や車いすを使う高齢者が家の中を動くには狭すぎます。
第3は、住宅面積が小さく一室当たりの面積も狭いという点です。住宅の構造上大きな空間を取りにくいという面もあります。昔は布団は押し入れに収納するなどにより空間を効率よく使っていましたが、生活が洋式化するにつれて家具類が増えるなどして使える面積が少なくなっています。夫婦2人が6畳間で畳の上に布団を敷いて生活していた場合、介護用のベッドを使うようになると夫婦2人が生活する広さは確保できなくなります。
第4は、小規模な住宅では介助をしようとしたり、車いすを使おうとしても通行のための幅やスペースが取れないことが多いという点です。高齢者を介助して歩く場合、介助者は体半分をずらして介助するので一人で歩く場合よりも通路幅はより広いことが必要になります。車いすで浴室に入る場合、車いすは入れたが介助者は入れないということもあり得ます。
第5は、床座(畳などの床面に座って生活する)という点です。畳の上に布団を敷いて寝る場合、床からの立ち座りは高齢者にとって負担となります。和式トイレでの立ち座りや和式浴槽のまたいでの出入りはバランスを崩しやすく転倒の危険性があります。
第6は、日本の住宅は夏の高温多湿に適したように造られていたことから冬の寒さには向いていない住まいが多い点です。冬の寒い夜に入浴しようとして、寒い廊下を通り脱衣室で服を脱ぎ熱い浴槽に入れば血圧が大きく変動します。高齢者の場合、家庭内事故の中で入浴中の事故が非常に多いという現実があります。(「老後の現状」のページの「高齢者に多い家庭内の事故」の項目参照)