認知症
認知症は進行する病です。現在のところ治すことはできませんが進行を遅らせることはできます。そのためには早期発見、早期治療が大切です。
国が2012年に策定した「
オレンジプラン」でも早期診断・早期対応が謳われています。
認知症についての記事をこのホームページの「漫筆」でも取り上げています。(トップにある「漫筆」をクリックして「漫筆一覧」のページからお選びください。)
認知症を患う方は85歳では4人に1人
認知症の高齢者は2010年で280万人、2012年で305万人(推計)です
(厚生労働省 2012(平成24)年8月)。
認知症は歳をとるにつれて増えます。85歳ではおおよそ4人に1人です。
年齢 |
100人当たりの
患者数(人) |
65~69歳 |
1~2 |
85歳 |
27 |
65歳以上の平均 |
8~10 |
厚生労働省 認知症をもとに作成
認知症の症状
〇認知症の
約8割はアルツハイマー型です。アルツハイマー型はゆっくりですが進行し、発症から3~5年は軽度、5~8年には中等度や高度に進行するとされています。
アルツハイマー型認知症の程度の目安(重症度)と症状 |
軽度 |
中等度 |
高度 |
〇最近の出来事をしばしば忘れる
〇記憶に頼る内容の会話は困難 |
〇何月日、時間、場所が不正確
〇注意力が減退
〇複雑な家事がかなりできない |
〇日常生活で全面的に介助が必要
〇新しい出来事は全く記憶できない |
〇アルツハイマー型の症状は中核症状と周辺症状に分けられます。
中核症状 |
周辺症状 |
誰にでもみられる、物忘れを中心とした症状 |
人によって現れたり現れなかったりする症状 |
〇記憶障害
〇会話に障害が出る
〇時間・場所・人物が分からなくなる
〇日常生活に支障をきたす |
〇興奮 〇徘徊 〇介護への抵抗 〇うつ状態
〇妄想 〇不眠 〇焦燥 〇攻撃的言動・行動
〇せん妄(意識混濁に加えて幻覚、錯覚がみられる状態) |
認知症高齢者の日常生活自立度
認知症高齢者の日常生活における自立を表す物指です。介護保険の要介護のランクとは異なり、自立度Ⅰでも要介護5の方がいますし、その逆に、自立度Ⅳ以上でも要介護1の方がいます。ただし、傾向としては、自立度Ⅰは要介護1、自立度Ⅱは要介護2、自立度Ⅳ以上は要介護4や5というおおよその相関があります。
ランク |
判定基準 |
見られる症状・行動の例 |
Ⅰ |
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している |
|
Ⅱ |
日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる |
|
(Ⅱa) |
(家庭外で上記Ⅱの状態がみられる) |
〇たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理等それまでできたことにミスが目立つ等 |
(Ⅱb) |
(家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる) |
〇服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応等一人で留守番ができない等 |
Ⅲ |
日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがみられ、介護を必要とする |
〇着替え、食事、排便、排尿ができない、時間がかかる
〇やたらに物を口にいれる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等 |
(Ⅲa) |
(日中を中心として上記Ⅲの状態がみられる) |
(Ⅲb) |
(夜間を中心として上記Ⅲの状態がみられる) |
Ⅳ |
日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする |
М |
著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする |
〇せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や、精神症状に起因する周辺症状が継続する状態等 |
出典:
健康長寿ネットホームページ
認知症高齢者の居場所
日常生活自立度Ⅱ以上の認知症高齢者(280万人)の居場所は、居宅が半数、次いで介護老人福祉施設、介護老人保健施設等(介護療養型医療施設を含む)の順となっています。
居宅 |
特定施設 |
グループ
ホーム |
介護老人
福祉施設 |
介護老人
保健施設等 |
医療機関 |
140万人
(50%) |
10万人
(4%) |
14万人
(5%) |
41万人
(15%) |
36万人
(13%) |
38万人
(14%) |
出典:
厚生労働省資料
〇
厚生労働省の認知症施策検討プロジェクトチームの資料によると、「自宅→グループホーム→施設あるいは一般病院・精神科病院」というような不適切なケアの流れのため、精神病床に入院している認知症高齢者は5.2万人(2008年)で、長い期間入院し続ける方がおられる現状があります。
住まいの整備で注意すること
認知症の高齢者は、転倒、徘徊の際の外傷、誤飲による食中毒などの危険があります。
こうした危険性を少しでも下げるような住まいのリフォーム、整備が望まれます。以下にFJC公式テキストからごく一部を抜粋してみました。このほか、例えば、
厚生労働省 認知症の取り組みなどを参考にしてください。
- 目が行き届きやすいようにする
- 認知症の高齢者は周りの見守りが必要で、孤立しないように家族の目が行き届くように
- 整備
- 転倒を防ぐ
- 判断能力や視力の低下などで屋内でも転倒しやすくなっているので、段差を無くすことや滑りにくくすること、照明を明るくすること
- 火災、やけど、中毒などを防ぐ
- ガスの元栓を閉めておいたり、薬、たばこの吸い殻、刃物などは目のつかないところに保管
- 徘徊への工夫
- センサーや外出したことを知らせるものを設置
- 失禁や不潔行為への対応
- 失禁処理のしやすい床材にしたり、汚物処理のための洗い場を設置。明るい色の標識など分かりやすいトイレの表示を付ける
- 火の不始末
- 自動消火装置を設置
- ものを壊す、いたずらをする場合の対応
- 貴重品を流し台やトイレに流されないよう排水溝に網などを取り付ける
- 幻覚や混乱への対応
- 花柄の壁紙などは錯覚を起こさせることがあるので、壁や床は無地のものにする。家具の配置を変えると混乱するので配置替えをしない