「不動産の査定価格」を考える

不動産の売却を業者に依頼すると、業者は査定した価格を提示します。これが査定価格と呼ばれるもので助言価格ともいわれます。一般に、査定価格はその価格で売りに出した場合には、3ヶ月以内に売却可能と判断される価格と考えられています。
査定価格は、(公財)不動産流通近代化センターが策定した「価格策定マニュアル」などの合理的な説明のつくものによって、売却時点の不動産市況と売却物件の特性を考慮して算定されます。
ここでは同センター出版の「宅地建物取引業務の知識」に基づいて、上記マニュアルによる査定価格の算定の概要を紹介します。同センターのホームページの資料も参考になります。

土地(住宅地の場合)

売却する土地(以下「物件」)と類似の土地(事例地)が実際にいくらで取引されているかを調査するとともに、物件と事例地について次のような項目を比較し数値化します。事例地の取引価格と比較数値を掛け合わせて査定価格が算定されます。なお、さらにプラスマイナス7%の範囲で流通のしやすさから査定価格を調整します。
このような方法は「比較方式」といわれます。
査定価格の主要な決定要因は、事例地の土地単価と物件の土地面積です。

 項目   例
 1.交通の便 最寄駅より   徒歩10分(780m)
 2.近隣の状況     (1)店舗への距離(徒歩で)  商店街・スーパーまで3分
 (2)公共施設利用の利便性  普通:徒歩や交通機関を利用して短時間で行ける
 (3)街並み  一般住宅地。周辺環境に影響を及ぼす恐れのある施設なし
 (4)近隣の利用状況  普通の住宅地
 3.環境    (1)騒音・振動等  なし
 (2)日照・彩光等  普通
 (3)眺望・景観  普通
 4.供給処理施設   (1)排水施設  公共下水
 (2)ガス施設  都市ガス引込済
 5.街路状況     (1)方位  敷地の北側が接道、振れ角0度
 (2)幅員  6m
 (3)路面の状況(舗装状況)  問題なし
 (4)周辺街路の整備・配置  ほぼ整然
 6.画地の状況   (1)間口(路地状敷地を除く)  約15m
 (2)形状(路地状敷地を除く)  整形
 7.その他の画地 の状況  該当する項目なし

建物(在来工法、ツーバイフォー、木質プレハブ工法、軽量鉄骨造でできている場合)

売却する建物(以下「物件」と表記します)と同等のものを現在造ったら、いくらかかるのかを調査し、これに売却する建物が造られてから何年経っているかによる減価修正を行って、査定価格が算定されます。
このような方法は「原価方式」といわれています。
査定価格の主要な決定要因は、建物が造られてからの年数、建築工法、建屋規模です。税法上の耐用年数は、木造住宅の場合22年で、経過年数が20年で査定価格はゼロとなるのが一般的です。

査定手順の概要は次のようになります。
(1)物件が所在する「県」と「建築工法」毎に定められた単価(「査定標準単価」)を決めます。
(2)物件の建屋規模に応じて査定標準単価の修正を行った後、部屋やトイレなどの構成比率とその状態から今造ったらいくらの単価(「部位別再調達単価」)になるかを算出します。
(3)部位別再調達単価から、建築後の年月によって減少した単価を差し引いた残存単価(部位別の現在単価)を算出し、これを合計して「査定建物現在単価」を求めます。
(4)査定建物現在単価に総床面積を掛けて建物の査定価格を算出します。なお、さらにプラスマイナス5%の範囲で流通のしやすさから査定価格を調整します。

マンション(居住用ファミリータイプの場合)

土地の場合と同じように比較方式で査定します。
中古マンションの取引事例を調査し、実際にいくらで取引されているかを調査するとともに、売却マンションと事例マンションについて専有部分部分の位置、状態、最寄駅までの距離、環境などの項目を比較し数値化します。事例マンションの取引価格と比較数値を掛け合わせて査定価格が算定されます。なお、さらにプラスマイナス7%の範囲で流通のしやすさから査定価格を調整します。




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