段差の解消

歳を重ねると、目が見にくくなったり、歩くときにつま先が上がりにくくなり、わずかな段差でも転倒し、骨折することもあり、場合によっては寝たきりの原因になります。また、車いす、床走行式リフトなどを使う場合、段差が大きいと使うことさえできないこともあります。段差の解消は介護保険サービス(厚生労働省資料)が受けられます。
なお、段差の5ミリメートル以下は「段差なし」とみなされます【日本住宅性能表示基準 評価方法基準 106ページ】。

段差のある代表的な場所

  段差のある場所         イメージ
   道路と敷地  
   玄関周り  
   洋室と和室  
  脱衣室と 浴室  

段差の解消の例


道路と敷地の段差解消

道路と敷地の間のL字溝の立ち上がり部分の段差は車いすでの通行の妨げとなりやすいポイントです。これについてはスロープ化したコンクリートやゴム製のブロックなどを仮置きして通りやすくする方法があります。なお、この段差を立ち上がり部分が低いL字溝に変更することも考えられますが、この場合は事前に道路管理者(市役所など)に切り下げのための申請を行う必要があります。

【スロープ化したブロックを置くイメージ】

FJC公式テキストをもとに作成

敷地と玄関ポーチの段差解消

敷地と玄関ポーチの段差の解消のためスロープを設置する方法が考えられます。この場合、勾配は
1/12(1m20cmの距離で10cm上がる)~1/15程度を目安とします。車いす使用の場合、スロープから道路に飛び出す危険性を避けるため、道路に面して1.5m四方以上の水平面を設けます。また、玄関などの出入りのために出入口側に1.5m四方以上の水平面を設けます。
なお、パーキンソン病の場合などスロープよりも階段のほうが適していることもあるので、事前に設置の是非を十分検討することが必須です。

【スロープを設置するイメージ】

(図の上にポインターを置いたり外したりしてください)

玄関ポーチと玄関土間の段差解消

玄関土間部分は玄関ポーチより一段高くなっています。これは室内の温度を保ち、隙間風・ほこり・雨水の侵入を防ぐためのもので、玄関戸の下枠に段差ができるのは止むを得ないともいえます。「日本住宅性能表示基準」の「評価方法基準」(106ページ)の高齢者等配慮対策等級5では玄関戸の下枠と玄関ポーチの段差は20mm以下、下枠と玄関土間の段差は5mm以下とされています。
なお、最近では図のような玄関引き戸が市販されています。玄関ポーチ側にグレーチングを設けて大雨でも雨水が玄関土間に入らないようになっています。

【高齢者対応の玄関引き戸のイメージ】

FJC公式テキストをもとに作成


玄関土間と上がり框(がまち)の段差解消

古い戸建住宅の場合、30cmていどの段差があることが多いので、高齢者にとって上がり框の上り下りに難儀をすることになります。そこで段差の解消や分割、手すりの取り付けなどが必要になります。

玄関土間に式台を置き、段差を分割する方法があります。奥行きは40cm以上とすることが基本です。利用する人の状態に応じて2分割にするか3分割にするかを決めます。
【式台の設置のイメージ】


FJC公式テキストをもとに作成

上がり框が10cm程度までの段差で玄関土間の広さに余裕があればスロープの設置が適しています。余裕がない場合は、可動式(携帯式)スロープを用いる方法もありますが、収納場所が必要なことと介助者が持ち運びできることが必要です。
【可動式(携帯式)スロープの設置のイメージ】

FJC公式テキストをもとに作成

上がり框の段差が大きいときや玄関土間が狭いときには段差解消機を設置する方法もあります。
【立位用の段差解消機のイメージ】

FJC公式テキストをもとに作成

この他、玄関ポーチや玄関土間を上がり框の高さまでかさ上げする方法もあります。この場合にはかさ上げした分だけ屋外でスロープを設置するなどにより段差を解消する必要がありますので、敷地に余裕がある場合に限られ、さらに、玄関戸や戸枠の取り付け高さを変更する工事が必要になります。

洋室と和室の段差解消

和室部分の床下の柱を短くしたり、洋室の床下の柱を長くしたりして和室と洋室の床面を合わせる方法がありますが、簡単ではありません。

最も簡単な方法はすりつけ板を設置する方法です。すりつけ板を使う時、体が不安定になるので手すりも併せて設置するとよいでしょう。すりつけ板の設置は介護保険制度の住宅改修項目です。
【すりつけ板のイメージ】

FJC公式テキストをもとに作成


既存の床仕上げの上に木材や合板などを設置してかさ上げし、その上に新しく床を敷いて段差を解消する方法もあります。
【木材を用いたかさ上げによる段差の解消のイメージ】
段差解消
(図の上にポインターを置いたり外したりしてください)
FJC公式テキストをもとに作成


脱衣室と浴室の段差解消(浴室のページと重複しています)

湯水が洗面・脱衣場に流れ出ないよう出入口に段差があります。高齢者には2cm以下とすることが望まれます。シャワー用車いすや介助用車いすを使う場合は5mm以下にするようにしましょう。
段差の解消方法としては「洗い場のかさ上げ」や「洗い場にすのこを置く」などがあります。

「洗い場のかさ上げ」の場合は、出入り口の洗い場側または開口部下枠のに排水溝を作り、その上にグレーチンクを置きます。ただし、この排水溝は補助的なものであることに注意してください。

【浴室(洗い場)のかさ上げのイメージ】
出入口の段差
(図の上にポインターを置いたり外したりしてください)
FJC公式テキストをもとに作成



老後と住まい
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