成年後見制度
成年後見制度講演会(2月12日)に参加し、品川成年後見センターの齋藤所長の講演を聴講しました。成年後見制度について講演の内容を中心に書きとめてみました

 認知症や精神障がいなどを有する人は、住宅・医療・福祉・金融などのサービスが適切に利用されず、また、悪徳商法や詐欺の餌食になる可能性があります。成年後見制度は、こうした判断能力が不十分な人の財産管理や身上監護を成年後見人、保佐人、補助人が行うことで、その人の生活を支援するものです。この制度は約100年前の民法からありましたが、2000年に、ノーマライゼーションの考え方、自己決定の原則、残存能力の尊重を基本理念として民法の改正が行われ、補助類型、任意後見制度が追加され図のような制度になりました。この年には介護保険制度もスタートしています。
(法定後見制度)
 申立人が家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の審判を経て後見が開始されます。
(任意後見制度)
 本人が判断能力のあるうちに、支援してもらいたいことを本人が選定した人と公正証書によって契約しておきます。判断能力が低下したら家庭裁判所の審判を経て後見が開始されます。
(利用者の概要)
  この制度の潜在的な利用者数は約840万人(認知症高齢者462万人、知的障がい者55万人、精神障がい者323万人)と推計されていますが、実利用者総数は約17万人にとどまっています。後見類型が約80%と最も多く、2000年に新設された補助類型は約3%とあまり活用されていません【(脚注1)27頁】。年齢は男性70代、女性80代が多く【(脚注1)16頁】、身体の状況では、要介護度3~5の人が約5割となっています【(脚注1)34頁】。後見申立の目的は、財産管理が最も多く、入院・入所契約等、身上監護が続きます【(脚注1)5頁】
(申立人)
 家庭裁判所に申し立てのできる人は本人、配偶者、四親等内の親族などです。2000年の法改正で市区町村長も「その福祉を図るための特に必要と認めるとき」は申し立てができるようになりました(脚注2)
(後見人、保佐人、補助人)
 後見人などには類型に応じた権限が与えられます。たとえば、成年後見人には、代理権、取消権、追認権が与えられます。後見人などの職業は、司法書士15%、社会福祉士12%、その他の専門職19%、無職15%、会社員12%などとなっています【(脚注1)24頁】
 家庭裁判所は、後見人と被後見人の資力などの事情によって、被後見人の財産の中から報酬を後見人に与えることができるものとされています(脚注3)。1ヶ月あたりの平均報酬額は約3万円ですが、本人の金融資産額が1億円以上の場合は約9万円になります【(脚注1)78頁】
 今後、この制度を利用する人が増大するなか後見人の不足が見込まれ、市民からボランティアを募り、後見人として育成し活動してもらう取り組みが行われています。

【参考】
日常生活自立支援事業
 金銭管理については、日常生活自立支援事業を利用することもできます。成年後見制度が本人に代わって法律行為をするのに対し、この事業では、日常的な金銭管理や預貯金の出し入れに不安がある人のなどを対象にして、あくまでも本人の意向に沿ってそれらの行為を支援したり代行したりする事業です。
 この事業は、都道府県社会福祉協議会が厚生労働省の補助金により行っている事業です。
                     (FJC検定試験1級公式テキストから抜粋編集)

(脚注1)「成年後見の実務的・理論的体系化に関する研究」(東京大学市民後見研究実証プロジェクト 2012年)
(脚注2)市区町村長の申し立ての根拠(老人福祉法第32条、知的障害者福祉法第28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第51条の11の2)

(脚注3)成年後見人等の報酬額のめやす(東京家庭裁判所 平成25年)





老後と住まい
戻る

トップ漫筆一覧>記事№10