老後と住まい
福祉と個別性
最近、福祉、住まい、街づくりについて意見交換をする機会がありました。印象に残ったのは、福祉には「個別性」があるという意見でした。管理者は住まいに関心がありますのでその視点で考えてみました。

たとえば住まいの廊下に手すりを付ける場合、取り付け高さは75cm~80cmが目安とされていますが、手すりがしっかり握ることができない場合は肘から先を手すりに乗せて移動する方が楽なので100cm程度が良いとされています。片手麻痺の場合、このホームページのトイレのページ(トップベージ>リフォーム>トイレ)で図示したように麻痺が右か左かによって手すりの位置が左右反対になります。意見交換の場では、バリアフリーにするつもりがバリアを作ることになることもあるという指摘もありました。つまり、老後の住まいなどのリフォームでは、その時の体の状態だけではなく将来の心身の変化予測、家族の意向、老後の資金などによってリフォームの仕様は一人ひとり異なる(個別性」がある)ことになります。

振り返って、リフォーム発注者の心身の状況や将来予測など個々の事情に応じた老後に向けたリフォームができているケースはどのくらいあるのでしょうか?心身の将来予測となると医師などとも相談することになりますし、リフォームの仕様を検討する際には理学療法士や作業療法士とも相談することになると思います。現実的にはリフォーム業者が一人一人の仕様を検討するには時間やコストが必要になり、リオーム費用が高くなります。勢い、市販品や一般的な仕様の中から選択することになり、ベストフィットというわけにはいかないと思います。

家を使いやすくしたり綺麗にするという目的のためのリフォームであれば、市販品や一般的な仕様の中から選択すれば十分でしょう。しかし、老後のためのリフォーム、まして介護を受けやすくするためのリフォームとなれば可能な限り個々の状況に応じた対応が必要になると思います。そうした個別性に対応する役割やコスト負担のあり方は今後の社会的な重要な課題だと思います。

(追記)
意見交換会とあわせて国立障害者リハビリテーションセンター内にある「障がい者ライフモデルルーム」の見学の機会がありました。そこにはバス・トイレで手すりやスイッチなどの配置をミリ単位で変えてその違いを体験できる設備などがあります。このような設備を利用して福祉の個別性に対応する仕組みを考える必要があるとの感想を持ちました。



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